築110年を超え、現役の学生寮として国内最古とされる京都大学「吉田寮」(京都市左京区)の現棟(旧棟)に住む学生ら42人に対し、大学が寮の明け渡しを求めた訴訟の判決が16日、京都地裁であり、松山昇平裁判長は一部の学生について大学の訴えを退けた。
大学と寮生側によると、吉田寮には1913年建築の現棟と、2015年建築の新棟がある。大学は17年12月、現棟は地震などで倒壊する恐れがあるとして、寮生の安全確保を目的に、寮生全員に18年9月末までに退去するよう通告した。だが、一部の寮生は退去しなかった。
吉田寮では長年、寮生による自治会が入寮の募集や手続き、選考などを行っている。これについて大学側は訴状で、自治会に「法的権限を授与したことはない」と指摘。寮を所有しているのは大学で、「(退去しない寮生は)不法占有者だ」と主張した。
吉田寮の寄宿料は月400円で、賃料だとは考えられず、寮生と大学の間に賃貸借契約があるとは言えないとして、大学には寮の建物の利用について広範な裁量があるとも訴えた。
一方の寮生側は、自治会と大学の間で、入寮の選考手続きや退寮の決定を自治会が行う旨の合意があったと主張。寮生は規程に定められた寄宿料を支払っており、賃貸借契約にあたるとして、寮生には寮の占有権原があると訴えた。
現棟の老朽化について寮生側は、建て替えが必要なほどかどうかが問題だと指摘。耐震診断の報告書には適切な補修で継続的に使用可能と書かれているとして、退去を求められるほど朽ちていないと主張した。
また、寮についての問題の解決方法として、自治会と大学で確約書を交わすなどして「合意を形成する努力を行う」「話し合うことなく、一方的な決定を行わない」といった合意があると指摘した。
寮生たちは昨年10月にあった意見陳述で、「話し合いを通じてより良い解決策を目指すべきだ」「経済的な利点や自治など、吉田寮には様々な良さがある。自分たちが立ち退いたせいで将来の寮生が得られるはずだった便益を損なってしまいたくない」などと述べていた。(光墨祥吾)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル